肝臓がん
肝臓がんの治療
肝臓のはたらき
肝臓は右の肋骨に守られた人体で最も大きな臓器です。生命を維持するための化学工場のような重要な働きをしており、役割りは主に三つに分類できます。
- 栄養の代謝と貯蔵:吸収された栄養分を体内で使える形に分解・合成して蓄える。
- 解毒作用:有害物質を分解・無害化し排泄します。
- 胆汁産生:腸内での消化吸収を助ける胆汁を分泌します。
肝臓がんとは
肝臓がんとは肝臓にできた悪性腫瘍のことで、肝臓にある肝細胞から発生した「原発性肝がん」と、他の臓器のがんが転移した「転移性肝がん」に分けられます。
原発性肝がんには「肝細胞がん」と「胆管細胞がん」がありますが、大半は「肝細胞がん」です。今回は「肝細胞がん」の診断と治療について説明します。
なお胆管細胞がんも切除を第一としますが、切除不能な場合も多く、使用する薬剤も肝細胞がんとは異なります。また転移性肝がんの治療は、もともとのがんによって異なります。
肝臓がんの診断
肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、がんができても症状や血液検査に現れることは比較的稀です。
肝がんの診断は
- 超音波検査(エコー)
- CT検査
- MRI検査
- 腫瘍マーカー検査(血液検査) などで行います。
肝臓がんの治療
肝臓がんでは肝炎や肝硬変を合併することが多く、肝予備能が各々の治療に耐えられるかどうか確認した上で治療を開始します。代表的治療について説明します。
(1)肝切除術
外科治療です。肝機能が良く保たれており、肝臓以外に転移がない場合に行います。肝臓は再生能力があり、切除後に元の大きさに戻ります。根治性が高い治療ですが、体への負担がかかります。最近は腹腔鏡(内視鏡)を使用した治療も開発されています。
(2)ラジオ波焼灼療法(RFA)
体表から電極針を刺して高熱を発生させることで、がんを焼き固める治療です。体への負担が少なく、繰り返し治療できます。ただし腫瘍の数と大きさに制限(3cm以内、3個以下)があります。
(3)肝動脈化学塞栓療法(TACE)
がんに栄養を送る「肝動脈の枝」にカテーテルを挿入して、血管を塞ぐ薬剤と抗がん剤を注入します。(1)、(2)では治療が難しい患者さんが対象になります。
(4)薬物療法
進行した患者さんに行われる治療です。最近は薬物療法の進歩が著しく、従来の抗がん剤とは異なり、がん細胞そのものに作用する「分子標的製剤」や「免疫チェックポイント阻害剤」などが用いられるようになってきました。
肝臓がんの予防
肝臓がんの発がんそのものを抑えることはできません。リスク因子をできるだけ避ける必要があります。
ウイルス性肝炎の治療、禁酒など肝疾患進行の予防が重要です。また、最近増加しているメタボリック症候群(肥満・糖尿・高血圧など)のコントロールが特に大切です。
いつでも元気 MIN-IREN:p6-8,2022.8 中澤幸久