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良性疾患

鼠経ヘルニア

鼠経ヘルニアとは?

「ヘルニア」とは内臓などが異常な場所にはみ出した状態のことです。

「鼠経ヘルニア」は、鼠径部(脚の付け根あたり)の腹壁が弱くなり、腹圧で腸や内臓が飛び出る病気のことです。一般的には「脱腸」と呼ばれたりします。

成人の鼠径ヘルニアは加齢などの後天性の要因で発症します。小児ではほとんどは先天性で、多くは生後1年以内に発症します。

鼠経ヘルニア

鼠径ヘルニアの症状は?

鼠径部が腫れます。くぼみに腸が入り込んだ状態を外から見ると腫れて見えるのです。痛みはないことが多いようです。下で述べる「嵌頓」の状態でなければ、手で押さえて引っ込めることもできます。

放っておいたらどうなるの?

「嵌頓」とは腸がくぼみにはまり込んで元に戻らなくなった状態で、放っておくと締め付けられた腸が腐ってしまうため、命に係わる状態です。鼠径ヘルニアでは年間1%程度の割合で「嵌頓」がおこるといわれています。

鼠径ヘルニアの治療は?

嵌頓した腸を元に戻せない場合、緊急手術が必要になります。この場合、腸の切除が必要になることもあり危険度は高くなります。

そこで、嵌頓する前に安全に手術しておくことをお勧めします。

手術は腹壁の弱い部位をメッシュを使用して補強する方法が一般的です。ズボンの穴をワッペンで補修するのと似ています。

手術には2種類の方法があります。当院では患者さんの状態に応じて、患者さんに適した方法を選んで手術を行っています。

*前方アプローチ

腰椎麻酔(下半身麻酔)で鼠径部を直接切開する方法

*腹腔鏡手術

全身麻酔で腹腔鏡を使用してお腹の中から治療する方法
一度に両側のヘルニアの治療が可能

[ みぎ側のヘルニア手術の場合 ]

みぎ側のヘルニア手術の場合

胆石症

胆嚢とは

胆嚢は肝臓で作られた消化液である「胆汁」を十二指腸へと運ぶ「胆道系」の一部です。「胆管」から分岐する袋のような構造物で、胆汁を貯留したり濃縮したりします。

胆嚢

胆嚢に起こる病気は?

胆石症

胆嚢の中に石や泥が貯留します。普段は無症状ですが、「胆石発作」という激しい腹痛を発症することがあります。

胆石が胆管に転がり落ちると「総胆管結石」となります。

胆嚢炎

おもに胆石が原因でおこる胆嚢の炎症。発熱と腹痛があります。

胆嚢ポリープ

胆嚢の中にできるポリープ。10mm以上の大きさのポリープは「がん」の可能性があります。通常症状はありません。

胆嚢がん

胆嚢の中にできるがん。通常症状はありません。

どんな検査をするの?

血液検査

炎症の程度、黄疸の有無などを評価します。

CT・エコー

炎症の程度、ポリープやがんの可能性などを評価します。

ERCP

胆石が落ちて胆管・膵管に詰まっている場合は、先に消化器内科により内視鏡治療が必要になることもあります。

どんな治療をするの?

腹痛や発熱などの症状があったり、がんの疑いがある場合に治療を行います。

治療は胆嚢摘出術で、手術で胆嚢を取ります。

手術は、ほとんどの場合「腹腔鏡」で行います。きずが小さいので術後の回復が早く、痛みも少なくて済みます。

手術のきず

今まであった胆嚢がなくなっても大丈夫なの?

胆嚢が無くなるだけで肝臓・胆管は残りますので、胆汁の分泌・運搬には影響なく。消化の問題もありません。

肛門・痔疾患

痔ってどんな病気?

痔とは肛門の病気の総称です。「いぼ痔」、「きれ痔」、「痔ろう」は痔の三大疾患と呼ばれています。

痔は男女、年齢に関係なくかかる病気で、成人の半数以上が痔を患っていると言われています。

痔になる主な原因として、便秘や下痢、排便時のいきみ、座りっぱなしなどの生活習慣などがあります。

それぞれの痔の特徴

それぞれの痔の特徴

いぼ痔の治療

比較的程度の軽い「いぼ痔」は外用薬(軟膏、座薬)や排便コントロールなどの保存療法を行います。

中等度以上の「いぼ痔」の治療方法

*ゴム結紮術

内痔核に対する治療、外来で治療ができます。

*痔核硬化療法

いぼ痔を「ジオン」という薬で固める治療。切らない治療なので術後の痛みや出血がほとんどない。
大きないぼ痔や外痔核には不向き。
1泊の入院で可能。

*結紮切除術(従来法)

いぼ痔の根元をしばって切除する方法。
大きないぼ痔、外痔核でも治療可能。
術後の痛みや出血がある。
7~10日の入院が必要。

*ハイブリッド法

「ジオン」と「結紮切除術」を組み合わせた方法。
大きないぼ痔、外痔核でも治療可能。
従来法よりも術後の痛みや出血が少ない。

2泊3日の入院で可能。

当院では手術が必要な患者さんには「ジオンによる硬化療法」でなるべく切らない治療を提案しています。大きないぼ痔の患者さんには「ハイブリッド法」で痛みや出血の少ない治療を行っています。

きれ痔の治療

比較的程度の軽い「きれ痔」は外用薬(軟膏、座薬)や排便コントロールなどの保存療法を行います。

きれ痔は慢性化すると肛門が狭くなり手術が必要になります。

手術はきれ痔の部位を切除し、狭い肛門を広げます。入院期間は3日です。

痔ろうの治療

*乳児の痔ろう

生後1ヶ月から1歳くらいの赤ちゃんに見られ、珍しい病気ではありません。

下痢や軟便の後に肛門のまわりが赤く腫れて膿をもつようになって起こります。

皮膚に小さな穴をあけて溜まっている膿を外に出す治療を行います。

1~2歳になると自然に治ることが多いとされていますが、2歳以上になっても残る場合は手術が必要になることもあります。

*成人の痔ろう

患者さんの病状にあわせて、膿のトンネルをくり抜いたり、膿の入り口を塞ぐ手術を行います。入院期間は7~14日程度です。

痔ろうは何年も放置しておくと、痔ろうのトンネルに「がん」ができることが知られており、しっかりと治療することが大切です。

大腸の内視鏡検査(大腸カメラ)をおすすめしています

痔の症状で来院された患者さんには必要に応じて大腸カメラをおすすめしています。

出血の原因が「いぼ痔」や「きれ痔」だと思って受診したら、大腸に「ポリープ」や「がん」がありそこからの出血であったということをたびたび経験します。

また、比較的年齢の若い患者さんの痔ろうの原因として「クローン病」が隠れている場合があります。