医療の安全と事故防止

医療事故の背景

 医療事故といわれるものには医療の進歩にともなう不可抗力のもの、つまり高度な医療は100%安全にはおこない得ないといったものから、薬物の混入、点滴、輸血の間違いなど人為的なものまで医療事故の原因はさまざまです。

 前者に関しては避けられないリスクのようなもので、別に考える必要があるかと思われます。後者に関しては原因として、チェックシステムの不備や医療サービスをおこなう医療従事者の多忙などの要因が挙げられます。

当院の取り組み

 当院でも、看護部や各職場、病院の組織である「医療安全委員会」を中心に安全性向上を図る取り組みが進められています。

  1. 重大なミスにつながりかねない事柄の報告から、ごく小さなミスまでを「ヒヤリ、ハット報告」として毎月200以上の報告をまとめて分析しています。
  2. 各種の治療方法を簡略化し、できるだけマニュアル化して事故を防いでいます。特に電子カルテシステムは有効で、「バーコード情報による点滴注射の間違い防止」や疾患別の治療計画指針である「クリニカルパス」作成が進められています。
  3. 「高齢者の内視鏡安全」「医療者に求められる医療安全の課題」などの内容で、外部講師を招いて院内研修会をおこなっています。

医療事故が生じた場合の対応

 医療事故に遭遇した人の願いは、元に戻してほしい、真相を知りたい、反省し謝罪してほしい、再発を防止してほしい、損害賠償してほしいという5つの願いがあるといわれています。その一方で、誤解を恐れずいうと、不可抗力な事故を含め、事故を起こした医療従事者の保護の問題もあります。患者さんを全力で救済しつつ、そして医療従事者も安心して働けるシステムを作らなければと思います。カルテ開示をしている私たちの立場は情報を開示し、もし事故が起きたら、まずその被害を最小限に食い止めつつ、原因究明を徹底的におこなうことであると考えます。

自分自身の医療情報を知ってください

 私たちは人々の命と健康を守るために全力を尽くしているのですが、医療には不確実な部分が必ずあります。

 これまでのカルテ開示の経験でも、患者さんが自分の病気を知り、治療法を知ることが、非常に大事であることがわかります。

 医療の安全性からいえば、カルテ開示などを通して自分の健康は自分で管理し、医療従事者はそのお手伝いをする、という考えがとても大事なのではないかと思われます。医療の不確実な部分も含めて、患者さんは医療の中身をもっともっと知ってほしいと思います。