理念

理念

医療福祉生協のいのちの章典と協立総合病院の理念

私たちは「医療福祉生協のいのちの章典」にもとづき、誠意を持って医療を行うとともに、日本の医療、福祉及び文化の向上と世界の平和に寄与するように努めます。

  1. 安心に暮らせる街づくり、医療・福祉・介護のネットワークづくりにつとめます。
  2. 患者を中心とする安心・安全の医療をめざします。
  3. 情報の開示と共有にもとづいた医療をめざします。
  4. 教育研修活動を推し進め、医療の水準の向上に努めます。
  5. 患者に優しい医療環境と地球環境への配慮に努めます。

基本方針

協立総合病院の医療の特徴

まず第一に組合員によって築いてきた病院ですので,地域での組合員のネットワーク、多くのボランティア活動に支えられていることが特徴です。第二に1994年からカルテ開示に取り組んできたことです。電子カルテが導入された現在もカルテ開示に積極的に取り組んでいます。これは個人情報の自己コントロール権の確立、インフォームドコンセントの推進、医療への患者参加の促進を目標に行ってきたものです。第三に緩和ケア病棟を名古屋市内で始めに開設した病院として、全人的なケアに力を入れています。体の問題とつながりを持った心のケアや家族、社会とのかかわりを考えられる医療をすすめていきたいと考えています。

協立総合病院の課題と方向性

医療費の削減政策の続くなかで、限られた資源で病院を運営してゆくことはどこの医療機関にとっても厳しいことになっていると思います。

一方で、今日の医療機関には、医学的な進歩をきちっと学ぶだけでは不十分な点が出てきました。私はそのほかに3つの点で改善をしてゆくことが必要だと考えています。それは安全と患者の権利とあたたかい医療というテーマです。安全・安心の組織作りという点では他産業に学ばねばなりません。患者の人権を守ると言う点では情報公開を始めとしていのちの権利章典をさらに具体的に実践する必要があります。療養環境や治療関係においては、もっと心に寄り添えるあたたかい医療が求められていると考えています。

わたしたちの病院には、救急医療を的確に行うといった地域での社会的存在意義や多くの組合員さんからの期待があると考えています。困難な時代ではありますが、期待にこたえるべく職員一同、団結して進んでゆきたいと思っています。

医療福祉生協のいのちの章典

はじめに

医療福祉生協は、いのちとくらしを守り健康をはぐくむ事業と運動を大きく広げるため、これらの成果を踏まえ、医療福祉生協連の設立趣意書の内容を基本にして「医療福祉生協のいのちの章典」(いのちの章典)を策定します。

「いのちの章典」は、憲法をもとに人権が尊重される社会と社会保障の充実をめざす、私たちの権利と責任を明らかにしたものです。

医療福祉生協とは

医療福祉生協とは、地域のひとびとが、それぞれの健康と生活にかかわる問題を持ちよる消費生活協同組合法にもとづく自治的組織です。医療機関・介護事業所などを所有・運営し、ともに組合員として生協を担う住民と職員の協同によって、問題を解決するための事業と運動を行います。

医療福祉生協が大切にする価値と健康観

私たちが大切にする健康観は、「昨日よりも今日が、さらに明日がより一層意欲的に生きられる。そうしたことを可能にするため、自分を変え、社会に働きかける。みんなが協力しあって楽しく明るく積極的に生きる」というものです。

私たちは、この価値と健康観にもとづき、医療・介護・健康づくりの事業と運動をすすめ、地域まるごと健康づくりをめざします。

いのちとくらしを守り健康をはぐくむための権利と責任

ともに組合員として生協を担う私たち地域住民と職員には、いのちとくらしを守り健康をはぐくむために、以下の権利と責任があります。

私たちは、知る権利、学習権をもとに自己決定を行います。

私たちは、個人情報が保護されると同時に、本人の同意のもとに適切に利用することができるようにします。

私たちは、安全・安心を最優先にし、そのための配慮やしくみづくりを行います。

私たちは、必要な時に十分な医療・介護のサービスを受けられるように社会保障制度を改善し、健康にくらすことのできるまちづくりを行います。

私たちは、主体的にいのちとくらしを守り健康をはぐくむ活動に参加し、協同を強めてこれらの権利を発展させます。

こどもの権利

こどもの権利(けんり)、わたしの健康(けんこう)(まも)るための約束(やくそく)

あなたが、いつでも(すこ)やかでいられるように、わたしたちは、お手伝(てつだ)いしていきます。

人生の最終段階における医療・ケアの在り方と意思決定支援指針

1.はじめに

人生の終末を迎えるにあたって患者個々人の多様な考え方、信念が明確にされるようになりつつある情勢の中、人命の尊重と患者の意思の尊重という二つの観点より、患者と医療従事者との相互理解に基づいて、適切な終末期医療が行われることが大切です。

2007年厚生労働省は、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を策定し、2015年に最後まで本人の生き方(=人生)を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であるとの観点から「終末期医療」から「人生の最終段階における医療」への名称変更を行いました。2018年には、近年の高齢多死社会の進行に伴う在宅や施設における療養や看取りの需要の増大を背景に、地域包括ケアシステムの構築が進められていることを踏まえ、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の概念を盛り込み、医療・介護の現場における普及を図ることを目的にガイドラインが見直されました。

このガイドラインを受け、近年の社会的背景を踏まえ、本院でも2005年に策定した「終末期医療の指針」を見直し、「終末期医療」を幅広く捉え、誰もが通る「人生の最終段階」において適切な医療・ケアが行われることを目的に、「人生の最終段階における医療・ケアの在り方と意思決定支援指針」を策定します。

2.本院における人生の最終段階における医療・ケアの基本指針

人生の最終段階を迎える患者とその家族が、医療・ケアチームとの話し合いのもと、患者の意思 と権利が尊重され、心安らかな終末期医療を迎えられるよう努めます。

本指針は厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を規範とします。

  1. 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本とし、医療・ケアを進めます。
  2. 本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援を医療・ケアチームで行い、本人との話し合いを繰り返し行います。
  3. 本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる人も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要です。この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する人として前もって決めておくことも重要です。
  4. 人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきです。
  5. 医療・ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行います。
  6. 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、対象としません。
  7. このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくことが大切です。

3.人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続き

「人生の最終段階」とは、がんの末期のように、予後が数日から長くとも2~3か月と予測ができる場合、慢性疾患の急性増悪を繰り返し、予後不良に陥る場合、脳血管疾患の後遺症や老衰など数か月から数年にかけ死を迎える場合があります。どのような状態が人生の最終段階かは、本人の状態を踏まえて、医療・ケアチームの適切かつ妥当な判断によるべき事柄です。

(1)本人の意思の確認ができる場合

  1. 方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報提供と説明を行います。本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえ、本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行います。
  2. 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思は変化しうるものです。医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるよう支援します。
  3. 本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行えるよう支援します。
  4. 話し合った内容は、その都度、診療録、看護記録にまとめておきます。

(2)本人の意思が確認できない場合

本人の意思が確認できない場合は、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行います。

  1. 家族等が本人の意思を推定できる場合はその推定意思を尊重し、本人にとって最善の方針を選択します。
  2. 家族等が本人の意思を推定できない場合は、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わるものとして家族等と十分に話し合い、本人にとって最善の方針を選択します。
    この場合、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行います。
  3. 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合は、本人にとって最善の方針を選択します。
  4. このプロセスで話し合った内容は、その都度診療録、看護記録にまとめておきます。

(3)複数の専門家からなる話し合いの場の設定

上記(1)及び(2)の場合において、方針の決定に際し、医療・ケアチームの中で心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合、本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容について合意が得られない場合、家族等の中で意見がまとまらない場合や医療・ケアチームとの話し合いで妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合等については、本人の心身の状態や社会的背景に応じて、担当の医師や看護師以外の医療従事者を複数加え、さらなる話し合いの場を別途設置し、検討を行います。

4. 認知症等で自らが意思決定することが困難な患者の意思決定支援

認知症等で自らが意思決定をすることが困難な場合は、厚生労働省が作成した「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を参考に、家族及び関係者、チームが関与しながら、できる限り患者本人の意思を尊重し反映した意思決定を支援します。

5.身寄りがない患者の意思決定支援

身寄りがない患者における医療・ケアの方針についての決定プロセスは、患者の判断能力の程度や入院費用等の資力の有無、信頼できる関係者の有無等により状況が異なるため、患者本人の意思を尊重しつつ厚生労働省の「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を参考に、介護・福祉サービスや行政の関わり等を利用して、意思決定支援を支援します。

6.意思決定の確認文書

(1)意思決定支援の内容について診療録、看護記録等にまとめます。

(2)Living Willを提出または所持している場合

日本尊厳死協会の尊厳死の宣言書あるいはこれに準ずるものに自署名、捺印のあるもの、基本的に親族(家族)とともに確認します。

(3)本院の確認書を活用する場合

本院の確認書は以下の文書があり活用できます。

蘇生術を行わない確認書(患者用)
蘇生術を行わない確認書(認知症、または意識障害のある患者家族用)
蘇生術を行わない確認の取消書(患者様用)
蘇生術を行わない確認の取消書(認知症、または意識障害のある患者家族用)

2枚記載し、1部は本人、または家族用、1部はカルテ保管とします。
決定された意思は変化しうることを前提に、機会(例:入院時、退院時、急変時など)毎に必ず意思確認をします。

7.緩和ケア病棟

緩和ケアは、「治癒不可能な疾患の終末期にある患者および家族のQOLの向上のために、様々な専門家が協力して作ったチームによって行われるケア」を意味しており、入棟時にDNRの了解を得ていると考えます。

このため緩和ケア病棟の入院にあたっては、入院の同意を以って確認書の提出とみなします。ただし退院時には確認書の取消が行われたものとします。

8.患者・利用者への公開

当指針については、患者・利用者にACP(アドバンス・ケア・プランニング)についての理解を促進し、当院の姿勢を示すものとしてホームページ上に公開します。

以上