診療科・部門案内透析室

透析室

透析室の紹介

透析室(ベッド数12)では入院患者及び高齢者などの比較的リスクの高い外来患者の血液透析を行っています。

当施設では、外来で透析を開始する「待機的導入」をおすすめしています。

これは、血管外科や透析専門施設と連携して、血管の準備(シャント増設術)を外来で行い、外来通院で透析を開始する方法です。

「待機的導入」は、尿毒症による重篤な合併症を減らし、社会生活にも支障をきたさない安全な導入法です。

透析に関する「負のイメージ」を持っていらっしゃる方は、尿毒症が出ても我慢される結果、重篤な心不全や消化管出血などの合併症をおこす方が多くいらっしゃいます。

不明な点は、担当の腎臓内科医に気軽に質問していただき、先入観や「負のイメージ」を払拭し、正しい知識を持って臨んでいただくようにお願いします。

血液浄化療法とは

血液浄化療法とは、体外循環という技術で体内の血液を一度取り出して、病気の原因物質などを取りのぞいて、きれいになった血液を身体に戻す治療です。

透析室では様々な急性期血液浄化療法に対応しています。

  • 血液透析(腎不全など)
  • 血液濾過透析(腎不全など)
  • 血漿交換(肝炎・血小板減少症・膠原病など)
  • 血漿吸着(膠原病・家族性高コレステロール血症など)
  • エンドトキシン吸着(敗血症など)
  • 顆粒球吸着除去(潰瘍性大腸炎など)
  • 腹水濾過濃縮再静注(肝不全・悪性腫瘍など)

慢性腎臓病など腎臓が正常に働かなくなるとおしっこが出にくくなり、老廃物や余分な水分を排泄できなくなります。この腎臓の働きを人工的に補うのが血液透析療法で、血液浄化療法の一種です。

透析患者は週3回病院に通い、4時間程度の血液透析を一生続けなければなりません。

透析看護のとりくみ

透析看護では患者の透析人生に寄り添い、ときにはご家族以上の長い期間で関わらせていただくことも少なくありません。そのため患者との信頼関係を築くことがとても重要です。何気ない会話を大切にし、透析中だけでなく生活全体をフォローできるように心がけています。また毎日のミーティングで患者の状態変化や問題点を情報共有し、スタッフ全員が同じ視線で看護にあたることができる体制をつくっています。

透析室ではACPにも力をいれており、アドバンス・ケア・プランニングは人生会議とも言われ今後どんな医療を受けたいか・どんな最期を迎えたいかなど、将来の変化にそなえて本人の意思決定を支援する取り組みです。透析室では患者本人だけでなくご家族や主治医と一緒に、定期的な面談を行っています。

スタッフ紹介

担当医師:2名
看護師:5名
臨床工学技士:9名

山川 正人 医師

【専攻領域】
腎臓病学、代謝内分泌学、膠原病学、透析医学

【所属学会・資格】
日本内科学会、日本腎臓学会(専門医・指導医)、日本透析医学会(専門医)

【著書】
単著:腎臓ナビ -腎臓が好きになる総合診療のためのガイドブック-(2019年CBR出版社)

日並 加保 医師

<看護師>5名

<臨床工学技士>9名

臨床工学技士=メディカルエンジニア(ME)は医療機器を専門に扱う技術職です。透析室では看護師とともに透析治療に取り組み、安全な医療を提供しています。MEは透析以外にも人工呼吸器など医療機器の保守点検や、内視鏡検査・心臓カテーテル検査の補助も行っており、チーム医療の一員として病院の医療安全に貢献しています。

◎取得認定資格

  • 臨床ME専門認定士
  • 内視鏡認定技士
  • 植え込み型心臓デバイス認定士
  • 呼吸療法認定士
  • ICLS認定インストラクター

腎臓のお話

ショッキングな見出しですね。実はこれ、2017年に放映されたNHKの人気番組、シリーズ「人体」の第一回のテーマだったのです。司会は、「iPS細胞」の山中伸弥先生と、タモリさん。ごらんになった方も多いでしょう。

「えっ、成人の3大死因は、癌、心臓病、脳卒中じゃないの」ですって? 確かに直性死因はその通りですが、「腎臓病」が、心血管病を引き起こす土台となることが、わかってきたのです。

腎臓には、一分間に1リットルもの血液が流れ込み、効率よく老廃物を排泄しています。また、血圧や体液量を調節し、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなど)の濃度をコントロールしています。血液を弱アルカリ性に保つのも腎臓の仕事です。その結果、全身60兆個の細胞が元気に活動できるのです。

ところで、日本には「見立ての文化」というものがありますね。後ろの山を庭の一部に見立てる「借景」がその例です。ちょっと、人体をラグビーチームに見立ててみましょう。

チームの中で腎臓のポジションは一体どこでしょうか? フォワード?バックス?・・・

実は、腎臓は各選手が力を出せるように、気を配る監督兼マネージャーなのです。

そのマネージャーが働けなくなると、チーム全員のパフォーマンスが下がって負けてしまいますよね。「腎臓病が心血管病を引き起こす」とはそういう意味なのです。

具体的に、どのように心血管病が引き起こされるのでしょう?

腎臓が、体液量や血圧をコントロールできなくなると、血圧が上がり、その結果、心機能低下や動脈硬化が進行するのはよく知られていますよね。しかし、軽い腎機能障害でも心血管病による死亡が増えることは、血圧や尿毒症だけでは十分に説明できません。

進行した腎障害患者では、高カリウム血症による不整脈が心血管死のリスクを上げることは良く知られていますが、それ以外にも、最近ではリンがクローズアップされています。

リンが「強力な毒」であり、リンの過剰摂取が、心筋線維化を起こしたり、血管石灰化を起こしたりすることがわかってきました。 このリンを尿中に排泄しているのも腎臓なのです。

このように、腎臓病と心血管病を関連づける未知の要因が、数多くあると考えられています。

ちょっと話が細かくなりましたが、軽度の腎機能低下やタンパク尿が、心血管病のリスク因子となりうる背景を述べたかったのです。

さて、腎機能は、健康人でも毎年一定の割合(毎年0.5パーセント程度)で低下します(加齢による腎機能低下)。そして、高血圧・糖尿病・肥満・高脂血症・高尿酸血症・喫煙・リンの過剰摂取、などの「悪化要因」が加わると、この低下速度が加速するのです。

腎機能がおよそ60%未満に低下した状態を、慢性腎臓病(以下CKD)といいます。日本では、成人の8人に一人=1300万人の方が慢性腎臓病と推計されています。

長寿社会では、ほとんどの高齢者が慢性腎臓病といっても過言ではありません。

「この悪化要因って生活習慣病そのものじゃないの?」

その通りです。ですから、CKD治療とは、多くの悪化要因(生活習慣)を注意深くコントロールして、腎機能の低下速度を加齢による低下速度にとどめることです。これを「集約的医療」と呼びます。

集約的医療がうまくいけば、たとえ100歳になっても50%程度のeGFRが保たれることになり、健康寿命(社会参加寿命)を伸ばすことが可能となります。

さまざまな薬や生活習慣の改善(禁煙・減塩食・運動など)により、上記の悪化要因を注意深くコントロールするのが「集約的医療」です。これによって、腎機能の低下速度を最小限に抑え、また時には大きく改善させることができます。

集約的医療には、患者の参加と協力が欠かせません。ですから、当院の腎臓内科外来では、具体的なイメージを模型やイラストで示し、理解を深めていただけるよう工夫しています。

最近、骨粗鬆症・サルコペニア(筋肉の減少)・フレイル(虚弱)・などが、高齢者の「生活の質(QOL)」低下の重要な要因として注目されています。

実は、これらの要因もCKDと表裏一体であることが分かってきました。ですから、CKDの治療では、これらの治療にも積極的に取り組みます。

腎機能がおよそ15パーセント未満になると、食欲不振やかゆみ、貧血、電解質異常、血液の酸性化などの症状が出てきます、これを尿毒症といいます。

尿毒症に対しては、「腎代替療法」を行うことで、元気に生活をし続けることができます。「腎代替療法」とは、腎臓の機能を代行する治療という意味です。

「腎代替療法」には、受けている方が多い順に、血液透析、腎移植、腹膜透析の三つがあります。それぞれ特徴がありますが、代行できる腎機能の割合からいうと、腎移植が約50%、血液透析、腹膜透析がそれぞれ10%程度です。

ですから、三つの腎代替療法のうちで、最も生命予後がいいのは腎移植ということになります。

当院腎臓内科は、尿毒症の発症前から腎移植の相談にのれるように、移植医療のエキスパート病院と常時連携をとってご紹介しています。

血液透析導入の基本方針と、透析室のご紹介

検診で、eGFR(推定腎機能)<60 のかたは、かかりつけ医と相談し、悪化要因を見つけて積極的に治療してください。各臓器や細胞のマネージャーである腎臓。その腎臓を元気に保つことで、チーム全員のパフォーマンスを上げ、心血管病や透析を避けることができます。

高齢になっても社会参加できる社会を、一緒に作っていきましょう。

文責;山川正人