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救急疾患

虫垂炎

虫垂炎とは

虫垂炎は腸の入り口である盲腸から垂れ下がっている虫垂という部分の炎症によって起こります。男女関係なく子供から高齢者まで幅広い年齢で発症します。

虫垂炎

虫垂炎の症状

症状は胃のあたりの痛み・へそ周辺の上腹部の痛みから始まります。その後、約1日ほどで痛みの部位が右下腹部へ移動するのが典型的な経過です。さらに病状が進行し腹膜炎に進行すると腹部全体へと痛みが広がっていきます。

他にも発熱、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢などの症状が現れます。

虫垂炎の治療

*内科的治療

炎症が軽度の場合、手術をしないで治療する場合もあります。一般的に「薬で散らす」といわれている方法です。

消化管の安静を保つために食事をひかえ、抗生物質(細菌を殺す薬剤)を点滴します。おおむね5日から10日程度の入院を要します。

一旦症状が治まっても、虫垂は残っているので退院後に症状が再発する可能性があり、その頻度は20%程度との報告があります。

*外科的治療

内科的治療によって回復しない場合や、虫垂の周囲に膿のたまった状態、腹膜炎の状態であればその時点で緊急手術となります。また、虫垂の内部に便が固まってできる糞石が詰まっている状態では破れる危険が高いので手術となります。

手術では炎症を起こした虫垂を切除します。

術式は開腹手術腹腔鏡手術があり、当院では患者さんの状態によって術式を選択しております。

虫垂炎の手術のきず

消化管穿孔

消化管穿孔とは

消化管穿孔は胃、腸の壁がなんらかの原因で穿孔(穴があいた)した状態のことです。消化液や消化中の食べ物、便、空気などが穿孔した場所から腹腔内へ漏れ出します。これらにより炎症を起こして激しい痛みを伴い、腹膜炎に進行するため早急な治療が必要になります。

消化管穿孔の症状

突然の腹部激痛が生じます。

どの消化管が穿孔したかによって疼痛部位は異なります。

腹膜全体に炎症が及ぶと腹部全体に強い痛みが生じ、炎症で腹部が硬直した状態になります。

消化管穿孔の原因

*上部消化管穿孔

十二指腸潰瘍や胃潰瘍、胃がんなど

*下部消化管穿孔

大腸憩室、便秘、大腸がんなど

*異物、腹部の外傷、内視鏡などの医療行為の場合もあります。

消化管穿孔の治療

腹膜炎が腹部全体に及んでいる場合は、発症後8時間以内に緊急手術を行うことが推奨されています。

*上部消化管穿孔

保存的治療(絶飲食、抗生剤)または緊急手術。

*下部消化管穿孔

憩室炎で炎症が限局している場合にかぎり保存的治療。ほとんどの場合は緊急手術を行います。

下部消化管穿孔は死亡率の高い病気で、術後は集中治療を要することが多い。

重症度にもよりますが、2週間から1か月程度の入院が必要です。

腸閉塞

腸閉塞とは

口から摂った食物は消化管を通りながら消化液と混ざって分解・吸収され、残った物が大便として肛門から排泄されます。この食物と消化液の流れが小腸や大腸で障害された状態を腸閉塞(イレウス)といいます。

腸閉塞の分類

*機械的腸閉塞

腸が物理的な原因で詰まってしまうもの。

  • 単純性腸閉塞:手術後の癒着(ゆちゃく)、腫瘍、食物、異物などで腸の内腔が狭くなった状態。
  • 複雑性性腸閉塞:腸が詰まると同時に腸の血行が障害される状態で、放置すると腸が腐ってしまいます。索状物による締め付け、腸重積、腸捻転、ヘルニアの嵌頓(かんとん)など。
    緊急手術が必要になります。

*機能的腸閉塞

腸の動きが障害されるもの。

  • 麻痺性腸閉塞:腹部の手術後や腹膜炎などで腸の動きが止まる状態。
  • 痙攣性腸閉塞:薬物や精神的な問題で腸が痙攣する状態。
複雑性腸閉塞

腸閉塞の症状

嘔気・嘔吐、腹部膨満感、腹痛、「おならの停止」などがみられます。

腹痛は強くなったり、弱くなったりを繰り返すことが多いです。

腸閉塞の治療

*保存的治療

絶飲食、点滴
「イレウス管」という管を鼻から腸まで挿入して、腸の内容物を吸引します。

*手術治療

1週間程度の保存的治療で良くならない場合や、繰り返す腸閉塞が手術の適応になります。

絞扼性腸閉塞が疑われれば緊急手術になります。

癒着をはずすだけの手術や腸切除が必要なこともあります。